認知症の基礎知識
兆候・原因と、家族にできること
離れて暮らす親のことを考えるとき、多くの方が頭の片隅に置いているのが認知症です。ただ、正確なところはよく知らないまま不安だけがある、という方も少なくありません。ここでは基礎的なところを、できるだけ落ち着いて整理します。
認知症とは何か
認知症は、脳の神経細胞が減ったり働きが悪くなったりすることで、記憶や判断などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態を指します。病名というより、いくつかの病気によって引き起こされる「状態」を表す言葉です。
原因となる病気はひとつではありません。異常なたんぱく質が脳に蓄積するタイプ、脳梗塞や脳出血など血流の障害が関わるタイプなど、いくつかの種類があり、現れ方や進み方も異なります。
加齢によるもの忘れとの違い
年を取れば誰でも人の名前が出てこなくなります。それ自体は自然なことです。認知症によるもの忘れとは、性質が違います。
| 加齢によるもの忘れ | 認知症によるもの忘れ | |
|---|---|---|
| 忘れる範囲 | 体験の一部を忘れる (何を食べたか思い出せない) |
体験そのものを忘れる (食べたこと自体を覚えていない) |
| 自覚 | 忘れている自覚がある | 自覚が乏しいことが多い |
| 日常生活 | 支障は出ない | 支障が出てくる |
| 進み方 | 急激には進まない | 徐々に進んでいく |
家族が気づきやすい兆候
本人より周囲の方が先に気づくことがよくあります。次のような変化は、頻度が増えてきたときに気に留めておきたいポイントです。
- 同じ話や同じ質問を、短い間に何度も繰り返す
- 約束や予定を忘れることが増えた
- 日付や曜日、今いる場所が分からなくなることがある
- 財布や鍵などの置き忘れが増え、「盗られた」と言うことがある
- 料理の手順が飛ぶ、味付けが変わるなど、慣れた作業がうまくいかない
- 身だしなみに無頓着になった、同じ服を続けて着ている
- 外出や人付き合いを避けるようになった
- 些細なことで怒りっぽくなった、逆に無気力になった
ひとつ当てはまるからといって認知症とは限りません。うつや甲状腺の病気、薬の影響など、別の原因で似た症状が出ることもあります。そして、そうした原因であれば治療で改善する可能性もあります。だからこそ、自己判断せず受診することに意味があります。
リスクを下げるためにできること
認知症は加齢そのものが最大の要因であり、完全に防ぐ方法は現時点でありません。ただし、生活習慣の中には見直すことでリスクを下げられると考えられている要素があります。世界保健機関(WHO)が2019年に公表したリスク低減のガイドラインでも、次のような項目が挙げられています。
- 適度な運動を習慣にする
- 禁煙する
- バランスのよい食事をとる
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を管理する
- 過度な飲酒を避ける
- 頭を使う活動を続ける
- 人と関わる機会を持ち、社会的な孤立を避ける
- 難聴があれば適切に対応する
注目したいのは、「孤立を避ける」「頭を使う」が項目に入っていることです。特別なことをしなくても、会話の機会があり、日々少し頭を使う習慣があること自体に意味があると考えられています。
気になったときの相談先
受診の目安は「日常生活に支障が出ているかどうか」です。迷ったら、次のような窓口があります。
- かかりつけ医 — まずはここから。必要に応じて専門医を紹介してもらえます
- もの忘れ外来・脳神経内科・精神科 — 専門的な検査を受けられます
- 地域包括支援センター — 市区町村ごとに設置された高齢者の総合相談窓口。医療・介護・生活の相談を無料でできます
介護が必要になった場合に備えて、要介護認定の仕組みや施設の種類を知っておくと、いざというときに落ち着いて動けます。介護施設や在宅サービスの探し方については、介護情報サイト「ケアどこ」もあわせてご覧ください。
離れて暮らしていても、できること
ここまで見てきたとおり、早く気づくことと、日々の会話や頭を使う習慣を絶やさないことが大切になります。とはいえ、離れて暮らしていると変化に気づくのは簡単ではありません。年に数回の帰省のときだけでは、どうしても見落としが出ます。
帰省時のチェックリストのように機会を活かす工夫に加えて、日常的にゆるやかに様子が分かる仕組みがあると安心です。クイズファミリーは、親御さんが毎日のクイズを楽しむだけで、その記録が家族に届くようにつくられています。
※ 本ページの内容は一般的な情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターなどにご相談ください。